いまや、バークレーハウスの人気講師としてIELTSプログラム総責任者も務める正木先生。
日本人としては希少なIELTS9.0の取得者であるだけでなく、英語を母語としない学習者に対する英語教授の探求にも力を入れており、CELTAを取得しています。
今回は、日本の英語教育における課題や英語に関する質問について訊いてみました。

正木 伶弥
保有資格:英検1級、TOEIC980、TOEFL120点、IELTS9.0、CELTA
ロンドン大学クイーン・メアリー校卒業
日本人としてはじめてIDP公式IELTS教員研修を修了。大手企業のCEOや役員をはじめ、IELTS対策講座で目標スコア達成に導いた生徒数は1,000名以上。
日本人が苦手とするスピーキング・ライティングに特化した「Mメソッド」の開発、Eラーニング教材や書籍の執筆など、多岐にわたって活躍。
正木先生はなぜ英語教育業界に?


英語力を維持するためのトレーニングはどんなことをしていますか?

とくにトレーニングってつもりはないんですが…
普段から英語を見る機会は多いですかね。
日本にいても、イギリスにいても、見聞きするのは英語のコンテンツなので英語に触れない日はないです。

興味の対象がそもそも英語なんですか?

たしかにそうかもしれないですね。
新聞、本、映画、YouTube…どれも英語のものばかり見てます。

それは意図的にではなく、昔からですか?

子どものころから英語のものを見てましたね。
もちろん字幕だけど…。
もっと幼いころは日本語で機関車トーマスとかも見てたけど、日本発のコンテンツではないもんね(笑)


じゃあ幼いころから英語に対するアレルギーはなかったんですね。
ちなみに英語講師になろうと思ったのはいつですか?

高校生くらいかな…
この前のインタビューでも話に出てきた親父が塾をやっていたんですよ。
だからなんとなく自分も英語を教える立場になるのかなって気はしてました。
明確にイメージしはじめたのは、たしか大学生のときでしたね。

ちなみに大学生のときに就職は考えなかったですか?

すこしは考えましたけど、とりあえずは親父の塾を引き継いでやってみるか、という考えになりましたね。
久々に日本で暮らしたかったけど、数年たって合わなければまたヨーロッパに戻ろうと思っていたので、一般企業に就職すると難しいかなと考えていました。

なるほど…そんな経緯があったんですね。

それともう一つ理由があって…
当時は今よりも圧倒的にIELTSの知名度が低かった日本で、自分のスコア含めたスキルと経験を鑑みて、正直その分野でのトップの1人になれない理由が見当たらなかった。
それだったらIELTSをメインにした塾をやって…
ある程度形になったら、誰かに自分なりビジネス形態なりを売り込めるだろうと思って引き継ぎましたね。
日本の英語教育における課題とは?


日本の英語教育における課題って何だと思いますか?

うーん…正直いっぱいありますよね。
結局のところ「英語を使ってその人は何をできるか」という評価基準が欠如しているんじゃないですかね。

難しいですね…
具体的に伺ってもいいですか?

大学受験の予備校でバイトしてたとき、大学入試の問題をみて思ったのは「英語ができる人を選抜するための試験ではないな」と。
日本の教育って「受け身な人を育てて選抜する」側面が強いと思うんです。
学校だったら先生の言う事をよく聞いたり、企業だったら上司にゴマをする人というか。
そう考えると、受け身でいけるリーディングは、ある程度できる人が多いのも納得です。

たしかに…評価システムもそうですよね。
学生の頃、先生に言われたことをやっていれば、それだけで評価されるように感じたことがあります。
日本人が英語を話せるようにならないのも試験形態の問題ですか?

そうだと思いますよ。
あとは英語教育の内容ですね。

学校の授業ということですか?

うん、たとえばスピーキングって授業でやらないじゃないですか。
もちろん入試で必要ないからやらないだけかもしれませんが、それだと英語を学んでも話せないのは当然です。
そもそもトレーニングをしたことがないわけですから。

なるほど、ほかにも問題とかってあるんでしょうか?

うーん…ものごとの考え方ですかね。
結論が決まっていない事柄について、オープンな言い合いとロジックをもとに、最大数の人間にとってベストな解決策を作り出す、という概念もない気がしていて。
言い合うというアイディアがそもそもないわけなので、スピーキング力が伸び悩むのは自然だと思います。


勉強になります。
あと性格とかってどうなんでしょう?

メンタリティの問題もあると思ってます。
日本人って「間違いを犯しちゃいけない」って考えの人が多いですよね。

たしかに間違いを恐れて挑戦できないときあります。
たとえば、外国の人と話したりとかも…。

それも日本人が英語を話せない原因です。
外国語を話す際は間違いのオンパレードでいいんです。
まあ、結局はどれも受けた教育と切り離せない要素なのだとは思いますが…。

世界的にみても、国民の大半が英語を話せない先進国って珍しいですよね。

そうですね。
でも歴史的な背景から英語を話せるようになった国も多いですよ。

そうなんですか?

まあ、あまりいい話ではないけど…
英語圏の国の植民地になると英語を話せるようになりますよね。
たとえば、アジアでもマレーシアやシンガポール、香港やインドはイギリス領、フィリピンはアメリカ領だったじゃないですか。

植民地支配の影響で英語が浸透した国もあるんですね。

そうですね。
だから日本が英語に関して出遅れるのはある程度は仕方なかったとは思います。
でもそこから先は教育の差でしょうね。
もちろんやろうと思えば日本もできるだろうし…。
外部試験の導入で日本人の英語力は上がる?


今、日本でもTOEICやTEAPなどの外部試験を導入しようとする動きがありますが、日本人の英語力にも影響はあると思いますか?

もちろん。
とくにTOEFLやIELTSを導入するなら、おおいに変わると思います。

それはTOEFLやIELTSが4技能試験だからですか?

うん、でもそれだけじゃないですよ。

そのほかにはどんな違いがあるんですか?

TOEFLやIELTSは「実際に使われている英語」にフォーカスしているんです。
そして文法的な知識ではなくて、実生活において求められるスキルを測るための試験です。
だからリーディングやリスニングのセクションも大きく変わるはずですよ。

入試のために作成された文法問題とは根本的に異なるということですね。
それでは、英語教育に関しては最後の質問です。
英語講師になりたい方へのアドバイスはありますか?

もしTOEFL・IELTSなどの資格試験を教えるなら、一度は留学すべきだと思います。
大学の交換留学とかでもいいので、英語圏の国で勉強した経験があればいいですね。
ブログ読者の悩みに回答


次に、当ブログの読者から寄せられた悩みへの回答をお願いします。

はい、どんどんどうぞ!

【悩み①】
会話の中で英単語が出てくるまでに時間がかかります。

うーん、慣れです(笑)

もうすこし詳しくお願いします(笑)

なにに慣れる必要があるかというと、英語ってシンプルな動詞だけでも話せるんですよ。
具体例をあげると、”have”や”get”や”do”あたり。
お洒落な言い回しではないかもしれませんが、基本的につまることはなくなるはずです。

【悩み②】
リスニングが聞きとれません。

はじめのうちはある程度仕方ないです。
聞きとれるようになるには絶対量が必要なので、誰しも我慢の時期があります。
そこを乗り越えたらスクリプトを目で追いつつ聞くトレーニングが効果的です。

【悩み③】
自分に合うテキストの見つけ方を教えてください。

好みやスタイルがあるので一概には言えないかもしれないですが…
レベル的な部分でいうとCEFRが参考になります。
EUの共通フレームワークなんですが、英語力のレベルを測るには適していると思います。
CEFRをもとに自分のレベルに合ったテキストを探してみてください。


【悩み④】
日常で英語を使う機会が少ないです。

環境を変えてみてください。
スマホやパソコンの言語設定を英語にするだけでも、だいぶ違うんじゃないかな。
話す相手はなかなかつくれないと思うので…。

【悩み⑤】
オンライン英会話はおすすめですか?

初心者の方で話す経験や絶対量が足りていない方には、すごくいいと思います。
はじめのうちは質より量なので、予約し放題みたいなプランでしゃべり倒してください。

【悩み⑥】
仕事で英語が必要なのですが、何から取り組むべきでしょうか?

まず、仕事で求められる能力って資格試験で問われる能力とは違うんですよね。
資格試験の長文読解のような文章は出てこないだろうし…。
ビジネスイングリッシュのクラスに通うのがベストだけど、安く済ませるならオンライン英会話じゃないかな。
どんな仕事でもコミュニケーションは基本だと思いますし。
【正木先生監修】バークレーハウスのYouTubeやブログもチェック!


それでは最後の質問です。
正木先生はバークレーハウスのYouTubeチャンネルやブログにも登場していますが、それぞれどんな方におすすめのコンテンツですか?

YouTubeは初心者と上級者におすすめです。
初心者の方は、学習のペースメーカーにするといいと思います。
モチベーションを保つうえでも役立つでしょうし。
あとはレッスンを受けられない方にもぜひ観てほしいですね。

上級者の方はどうでしょう?

ぶっちゃけスクールに行かなくても、動画だけ観てできちゃう人ですね(笑)
コツややり方を聞けば自分でできちゃう人は、お金を払ってスクールに通うより動画がおすすめです。

でも上級者の方はテキストの解説を見ればできちゃうんじゃないですか?

実は、ぼくの動画で使っているテキストは解説がないんです。
公式本だから対策をするには最適なのに、解説がないから自習には向いていない。
でもYouTubeを観れば一人でも学習できるので、上級者の方はぜひどうぞ!

そうだったんですね…!
それではブログはどんな方におすすめですか?

ブログは初心者から中堅あたりのレベル向けかなあ。
上級者の方なら知っている内容がほとんどだと思いますし。
TOEFLやIELTSについて、もっとよく知りたい方向けのコンテンツがそろってます。

前回に引き続き、フレンドリーに取材に応じてくれた正木先生。
海外で英語を学んだ正木先生は、日本で英語教育に携わって違和感を抱いた部分も多かったと語っています。
そんな経験もあって、現在では実用的な英語力を測定できる試験 ”IELTS”を普及させるべく奮闘中だそうです。